サイダーとひろいサウナは変わらない
初めて来たのは一昨年の夏。
当時ボーナスでクロスバイクを買った俺は行動範囲が広がって、真夏なのに20km〜30km自転車にまたがって色んな場所に行き、その帰りは未開拓なサウナに寄ってた。
ここひろいサウナもその1つ。
一見さんを引き寄せ辛い小道の奥に佇むアンダーグラウンドな雰囲気。
恐る恐る中に入ると和彫のお客さんばかり。
サ室に入ると常連さんがサウナマットのルールや休憩所の飲み物やサイダーのことを色々教えてくれた。
いつも常連しかいないから新しい人が来るとすぐに分かるとのことだった。
当時はサウナイキタイもまだそんな流行ってなかったしね。
そして最高の水風呂を体験して、あまりの気持ち良さにフラフラになりながら上がり、帰ろうとすると女将さんに「どこから来たの?」って話しかけられて少し世間話をして最後にサイダーを1本貰って帰った。
この時飲んだサイダーの味が忘れられずに、今も時々行ってると言っても過言じゃない。
大体1ヶ月半ぶりの訪問。
タバコ臭い休憩室に、ボロボロの細いロッカー、誰にも使用されずボールの色がくすんだパターゴルフ、未だに置かれてる夏用シャンプー、サ室内に散乱する独特のルールによって運用されるサウナマット、水風呂、お湯問わず常にオーバーフローする浴槽、浴室の隅に乱雑に積み重なるナイロンタオル
いつ来ても何も変わらない。
多様化し、変化を求められる社会だからこそ”何も変わらない”という事が羨ましいし、同時に安寧をもたらしてくれる。
なんだか心の底に沈殿してた灰色の老廃物が少し溶けていってくれた気がする。
サ室ももちろん、湿気というものが消滅したかの如くカラカラのハードコアストロング仕様で118度。
和彫のアニキと弟分と一緒にカリカリに焼かれてく。
アニキが席をたてば弟分は小走りにドアへ向かい開け閉め、アニキが話しかける内容に食い気味の相槌、また常にアニキの動きに先回りして徹底的にケアをする
羨ましいとは思わないが、アニキと弟分が楽しそうに笑いながらサウナや水風呂に浸かってるのを見て、サウナの楽しみ方にマナーはあってもルールはないんだなぁとボンヤリと思い少し嬉しくなる。
堅気で一般ピーポーの俺はこれからも一般ピーポーらしくサウナを楽しむとするよ。
サウナ上がり、いつものように帰り際にサイダーを貰い歩きながら一口飲む
初めて来た時から変わらないこのサイダーの味が、俺に「また来てね」って言ってくれてるような気がした。
また来るね。
つづく