初めての契約と巻き戻らない舌

「こめ…これ5,000万円に減額出来ない？」

用地仕入の営業になり来る日も来る日も世田谷区や目黒区、渋谷区の不動産会社に顔を出して、

「こんちわー！○○のこめです！土地買います！…ないですか…ザッス！！！」

と用地仕入のために靴をすり減らして、会社に戻ればレインズ（不動産・建築屋専用のHP）で新規案件は無いか、いい感じの物件が有れば取り扱い会社に電話して

「お世話になります、○○のこめと申します！レインズに今日登録された世田谷区△△の物件確認なんですが…はぁ、もう満額で1番手が入ってるんですか…分かりました、ザッス！！」

というのを繰り返す毎日

う～ん用地仕入はやっぱり大変だなぁ…と痛感してたある日、何となく話が合った某大手仲介業者の担当者Aから着信

こ「ザッス！！こめです！！お世話になります！どうしたんですか？」

A「こめさん…世田谷区の桜新町にまだ自社HPにも出してない未公開案件あるんだけど金額出せない？」

こ「案件ザッス！！メールで資料一式貰えれば今日中に返答しますよ！」

A「マジっすか！？すぐ送りますね！！」

こ「ザッス！！」

そしてメールがきて、資料を開けると…これは絶対買う！！！

なんだこの案件！！なんでこんな熱い案件が俺のところに来たんだ！！

ありがたいことに役所調査も済んでる…売却理由も強い…

しかもうちの会社が得意パターンの土地、1番金額張れるじゃないか？

そして収支を組み、Aに返答

こ「ザッス！こめです！金額出ました！5,400万円でっす！うちに卸してくれたら3ヶ月専任媒介出すっす！」

A「おおっ！マジっすか！それは決まるかもしれないんで担当者に話してみます！」

こ「ザッス！マジでお願いします！このままじゃ今月タコって本部長にぶっ〇されるっす！」

後日

こ「お世話になります、こめです！」

A「こめさん！この前の桜新町の案件こめさんで話纏まりましたよ！」

こ「！！ザッス！」

A「～日に契約出来るんで買い付け出してもらえますか！」

こ「ザッス！ザッス！！！」

ルンルン気分で会社に戻り、支店長に報告

こ「支店長～♪この前相談した桜新町の案件纏まりました～♪買い付け出します♪」

支「マジか！？やったじゃん！あれ売れるぞ！！印鑑押すから資料みせてー！…こめ、これ5,000万円に減額出来ない？」

こ「…え？なんでですか？前相談した時売れるから突っ込めって言ってたじゃないですか？」

支「（再販時の）売値、ちょっと強すぎないか？」

こ「いやいや、マーケティングでどれだけ高値でも売れるってどの業者も言ってますし、各業者の提示価格よりも安いじゃないですか！？」

支「う～ん…でもなんか怖いんだよなぁ」

それも無理はない

だって今まで会社では誰もやっていなかった世界でトップクラスに地価が高いと言われる東京の中でもさらに上位クラスに地価が高いエリアだ

リターンが大きい分、リスクもそれなりにある

だけど吐いた唾を呑めないように、契約が纏まっている中減額というのは仲介業者からしてみれば「ナメとんのかぁ！？」と思わせるのも当然で、それが原因で出禁や案件がパタリと来なくなることもある

それでも何事においてもリターンを得るためにはリスクを避けるなんて虫のいい話は無いわけで、やんややんや支店長と交渉するも結果は減額

そしてAに事の顛末を話し、キレられながらもあっちからしてみても契約は壊したくないので、5,100万円でなら…というところで落ち着き、社内的にも稟議が降りて何とか無事に契約…

とはいかず、登記識別情報という不動産の売買取引をする上では欠かせない身分証のようなものを売主が忘れていて、結局は後日に再契約

この時は逆に俺がキレて、Aが謝り倒してきたけど

古屋が解体されて、整地されて、ブロックが積みあがったり、ガス管が引き込まれる様子をよく見に行ってた

そして販売を担当する営業担当の後輩が俺の設定した売価より遥かに高値で売価設定をしたものの、更地で即売れました

でしょうね！！！

その後もAから頻繁に案件が来てもう1回取引した

自分で言うのもなんだけど、元々相場観には少し自信があって、その後も世田谷や目黒で順調に仕入をして、社内の他の用地仕入の人からも城南エリアの相場を相談されるぐらいにはなった

この桜新町が初めての仕入契約だったからやっぱり1番印象に残ってて、覚えてることも多い

他にも

「こめ、成城で近隣住民17人に囲まれる」

「こめ、目黒で涙の売主手付放棄解約」

「こめ、世田谷区桜で敷地延長1棟企画に挑戦」

「こめ、敷地内電柱を実費で移設」

とか色々あったけどね

前職の独立した先輩が今こういうプロジェクトやってるよ～とか色々連絡くれて、ふと思い出した

今年のクソ物件オブザイヤーも楽しみだなぁ