ハッピーエンドにさよならを

漫画、小説、音楽、サウナの雑記

サウナブームの片隅で

よく晴れた、気持ちの良い昼下がり、家から車で30分程のスーパー銭湯に俺はいた

連日の精神をすり減らし賃金に変換していく仕事という名の錬金術や片道200km以上は当たり前の車移動でボロボロになったメンタルや体を労わりにやってきた

歳を取ったせいかもう睡眠だけではカバー出来ないし、そもそも連続して何時間も寝る体力すらも無い

体を洗い、湯船に浸かり、サウナへ入ると丁度オートロウリュの時間だったらしく最上段と2段目は満席だったので下段のストーブ前に大人しく座る

サウナ室にはサウナハットを被る人や、マイサウナマットを持ち込む人も散見された

2年前じゃ信じられない光景だった

それでも今じゃ広島のサウナ施設に行くとサウナハットは当たり前に見かけるし、何よりそもそもサウナにいる人が2年前より遥かに増えた

それは広島だけじゃなく、中四国の色々なサウナで言える

サウナブームは大なり小なりサウナ不毛地帯中四国にもやって来たんだなぁと改めて思った

 

上段に座ってサウナハット+サウナマット君が退出する時にサウナマットから溜まった汗が流れめちゃくちゃ俺に掛かったのを拭きながらサウナブームについて熱が貯まり始めた頭でボンヤリと考える

 

2016年〜2018年頃はサウナが好きというと珍しがられ、誰も食いついて来なくて、結局誰とサウナの話をするでもなく、1人で黙々と銭湯やサウナ施設に行ってたのを覚えてる

2017年の4月に今の会社に転職したけど、面接で「趣味は?」と聞かれ「週2,3回サウナや銭湯に行きます」と答えたら「へぇ〜若いのに良い趣味してるね」と言われたのも覚えてる

北欧やサウナセンター、草加健康センターへ行っても大抵見た目的に俺より若い人は居なくて静かな空間だった

しきじでさえも多少人は居ても入館待ちなんてものは無かったし、そもそも入館待ちという事が起こる想像すらつかなかった

それでも今思うと中目黒の光明泉や池尻の文化浴泉、笹塚のマルシンスパなど都心に近い施設は体感的に2017年後半〜2018年後半にかけて利用者は確実に増えていってた気がするし、サウナブームの予兆はあったのかな?って今は思う

 

その裏側には2017年にサービスを開始したサウナイキタイの功績があったと思う

当時は登録せずチラチラ見てただけだけど確かサ活機能は無かったし、ひたすらサウナ施設を紹介してるサイトだった

少しするとサ活機能が搭載されて、へぇ〜こんなにサウナ好きな人がいるんだと思い眺めてて、未だ見ぬ施設を思い馳せながら俺もようやく登録した

サウナイキタイのマイページを見ると2018年の10月に登録して2484番目の登録者だった

2022年2月に登録した人は108000台の番号だった

増え方エグ過ぎないか??

ちなみにサ道シーズン1から1年経った2020年7月に登録した人は34000台

何かしらの形でサウナに興味を持ってサウナイキタイに登録した人がもう10万人を超えてるという現実が信じられない

 

じゃあ何でそんなにサウナに入る人が増えたの??

完全に私感だし、的外れな事を言うかもしれないけど、1つは趣味としての参入障壁の低さと日常生活との親和性があるからだと思う

ゴルフをするにはゴルフクラブやウェア、ゴルフ場への移動、時間的制限(早朝からのラウンド)と金銭的、肉体的ハードルがある

フットサルをやるには人数を集める必要があるし、場所の予約や怪我の心配などのハードルがある

手芸を趣味にするにはそもそもの向き不向きがあって誰しもが必ず楽しめる訳ではない

だけどサウナ(温浴)は銭湯なら1000円あれば90%の施設はサウナに入れ、水風呂に入れ、大きな浴槽に浸かれるし、24時間やってるサウナ施設もあるからいつでも自分が好きな時にサウナに入れる

何よりお風呂に入るという行為は当たり前の日常でその延長線にあると言える水風呂やサウナはそこに至るまでのハードルが低く、持病を持っていない限りは誰でも楽しむ事が出来る

体験出来る人の母数が多ければ、それだけハマる人も多くなる

 

後はドラマ版サ道はやっぱりデカかったんだなぁと思う

明らかにサ道前と後でサウナに入る人口は増えて、施設の客層に変化があった

1番通ったのが草加健康センターだから草加を例にして言えば、それまで実施されていたロウリュイベントは2019年始め〜2019年7月ぐらいまでは多少混みはしても満席なんて事はほぼ無く、むしろ数人しか居ないという時もあった

そもそもロウリュイベントも週3回の19時、0時だけだった(+月1回?隔月1回?の耐久爆風ロウリュ)

特に0時の回は余計に人は少なくてある意味好き勝手出来る環境だった(SSKさんがサウナ室を熱くし過ぎてサウナ室に靄がかかったり、火災報知器がなった記憶がある…)

ましてや当時サウナハットを被っていたら草加でさえ他のお客さんに怪訝な目で見られ、かなりマイノリティだった

だけどサ道の草加健康センター回は新宿からバスを2台出して、大広間でパブリックビューイングを実施したらあまりの人の多さにオーダーストップがかかるなど、2018年末に草加で行われた純烈のライブよりめちゃくちゃ人が居てビビった覚えがある

それ以降明確に草加は利用者が増えていき、更にコロナ禍の最初の緊急事態宣言前と後で完全に客層が変わった

館内着や持参したであろう浴衣を着て、酒を飲み、大広間でカラオケを楽しんでた年配の方々は少数になり、館内着を着つつもサウナグッズに身を包み、"サウナー"である事にアイデンティティを置いてるかのような若年〜中年層の方々がメジャーとなった

 

レインボー本八幡は初めて行ったのが2019年7月と既にサウナブームの入口にいる時期だったけど、言葉は悪いかもしれないが俺みたいなサウナキッズに侵食されている状態では無かった

ロウリュの時間になってもサウナ室の埋まりは7〜8割ぐらいで、それ以外の時間は食堂やリクライニングは混んでても浴室はまばらに人がいる程度だった

サ道に出てこず、サウナ屋の少し高い敷居と銭湯やスーパー銭湯と比較すると高い料金(時間)設定故だったかもしれないが、サウナブームと呼ばれ始めた時期の初期でも他の施設に比べて平和だった気がする

今では人気店のひとつとなり、ロウリュイベント時はサウナ室前に待ちの長蛇の列が出来る程になった

 

勘違いして欲しくないのは別に上記の事を否定、批判するつもりはサラサラ無く、淡々と事実を書いてるだけで、もし棘があるような書き方に読めるならそれは俺の文章が拙いだけで、ご容赦いただきたい

 

上記に述べたような状況になったのは一概にサウナブームで済ませるのはいささか雑で、勿論そうなるように施設側が企業努力をして、これまでサウナに目を向けて無かった層の取り込みに力を入れてきた結果だと思う(全部のサウナ施設がそういうわけではないだろうけど)

それが叶ってるならそれは企業として成功だと思うし、素直に嬉しい

 

サウナ好きが増えるのは賛成だしこれからもどんどん好きになる人が増えて欲しいと思う

だけど、あまりにも急激なスピードで人が増えすぎた

サ道はその後SPも放送され、2021年にはシーズン2も放送された

ラジオ、TV、YouTube、雑誌、あらゆる媒体でサウナが囃し立てられ、有名人がサウナ好きを公言し、「ととのう」という耳障りの良いフレーズはキャッチーで、TVや動画で見るロウリュ(熱波やアウフグース含む)はド派手なエンターテイメントだった

サウナに関連する書籍や雑誌が刊行され、面白いように売れるのか続々と出版された

結果的にサウナ人口(もしくはサウナに興味を持つ人たち)は先に述べたサウナイキタイのユーザー数を見る限り爆発的に伸びたが、サウナに行く人増加は明確にカオス(混沌、無秩序)をもたらしたように思う

それは浴室やサウナ室は勿論だけど、施設外(主にSNS)を含めての話だ

何も新しいサウナ好きの人たちが全てをもたらした訳では無く、元々何年もサウナが好きで通ってた人の中にも明確にカオスをもたらすような人は居た、観測出来る範囲で何人も

そこへ更に同じような属性の人たちが増えた事でアノミーと呼べるような状態になりかけている様な時期すら有ったと思う

そして参入障壁が低いだけに、余計にそういう人が多い界隈なのかなとも思う

結果として、人気施設では入館待ちやサウナ待ち、お客間もしくはお客さんと施設間でのトラブル、SNS上での糾弾や重箱の隅をつつくような舌戦やトラブルは明らかに増えた

これは過渡期故に起こる事なのか、それとも今後も続いていくのかはよく分からないし、興味は無いからこれ以上触れないと思う

それと、人が増えたから土壌が出来たのかサウナに関連するところでお金や商売の匂いが付き纏うようになった

それがサウナや温浴施設が主体なら何も文句は無いが、そうでは無いサウナに対して責任を負わず、同人や趣味という域を超えて、サウナにフリーライドして対岸から蜜だけ啜っているような資本主義の腐った匂いを撒き散らすような奴なら話は別だ

何人も表れては消えていった気もするけど、まだまだ居るし、今後もしぶとく地べたを這いつくばっているんだと思う

 

ただそんなサウナブームがあったからこそ、俺らのサウナ生活は選択肢が増えたし、ある意味減った

このサウナブームがなければ、堀田湯は代替わりに伴って廃業していたかもしれない

かるまるのような施設は生まれなかったかもしれない

テントサウナのようにアウトドアで手軽に楽しめる環境は生まれなかったかもしれない

個室サウナという今のコロナ禍時代にマッチした形態は生まれなかったかもしれない(最近増えすぎ感は否めないけど)

島根の四季荘や鳥取のNature Saunaのような施設も生まれなかったかもしれない

ロウリュは色々な施設で、頻繁には行われず、ロウリュを受けたければ施設を探してピンポイントに訪問するしか無かったかもしれない(ロウリュやアウフグースばっか追い求めるのは不健康なサウナスタイルだと思うけど)

ロウリュ姉妹は居らず、厚木健康センターのいち可愛い女性従業員だったかもしれない

マグ万平は未だにマルシンスパでバイトしてたかもしれない

オートロウリュ付きの銭湯なんて夢のまた夢だったかもしれない

 

だけど、サウナブームが無ければ、

広島から帰省して草加健康センターに行くたびに仲良くしてくれてた人達にも毎回会う事が出来たのかなぁ

レインボー本八幡に行くたびに仲良くしてくれてた人達にも毎回会う事が出来たのかなぁ

と思う事もある

施設で(特に草加で)1人でサウナ後にご飯を食べてると「前は行けば必ず誰かしら居て、一緒にご飯食べてたのになぁ…」と考える

これはただの感傷だ

爆発的なサウナブームがミクロな観点で俺にもたらしたものは「寂しさ」だ

 

サウナをブームで終わらせずに文化にしたいという意見もあると聞いたことあるけど、それは残念ながら現状は無理だと思う

サウナは生活様式としては微妙に大衆的で無ければ、洗練されている訳ではない

そしてその地盤はフィンランドというのを大々的に謳っているから結局伝統的とも言いづらい

良く言えば発展途上、悪く言えば中途半端な立ち位置のように思える

100年後はどうなってるか分からないけど

ただ何となく個人的には「文化」になってしまったサウナはつまらないなと思った

 

くどくどと偉そうにサウナブームについて俺なりに考えたけど結局はこのサウナブームが良かったのか、悪かったのか分からない

どれだけ居心地の良いサウナ室だろうと、そこに一生入っていることは出来ないように、いつかこのブームにも終わりが来る

その時になって初めて評価というか回顧出来るものになると思う

サウナだってサウナ室から出て、水風呂に入って、着替えて一息ついた時に「良いサウナだったなぁ…」って思うしね

今のサウナブームはまだサウナ室に入ってるような状態だ

それにこの先何があるかまだ分からない

 

とりあえず1時間半ぐらいサウナブームについて考えながらサウナに入ってたけど、最後館内から出て車に乗って煙草を一息吐いた時「今日も良いサウナだったなぁ」と思えたからそれで俺は満足さ

5,000字近い中身の無い長文を読んでいただきありがとうございました